Marvin gayeの物まねで「スゴいの〜」と歌うグッチ裕三を観てしまったらもうおしまいだ、"God is love"は正座して聴こうが逆立ちして聴こうがもはやグッチ氏の多重コーラスにしか聞こえない。もちろんそのこと自体は歓迎する。ところでSound Horizonの「黒の預言書」は聴き手の肌の上で機能する音楽の論理展開の仕方がビーチ・ボーイズの「英雄と悪漢」みたいだよなあ……と思っていたら『Smiley Smile』の公式版より新生『SMiLE』版のほうがいいかも、と思えてきて(旧『SMiLE』版は除くが)、実際に仕事の粗い公式版より新生版のほうがはるかに好感が持てたことに驚き。まあいまさら何言ってんだという感じですが。このアルバムを作った忠実なブライアン信者たちは決してまちがえない、それは彼らがミュージシャンとしてきわめて優秀だからなのだけどそのまちがえないまちがえさせないといういじましいほどの意志の強さが音楽を捻じ曲げ、つまり自然に捻じ曲がりまた聴き手の身体をもそれに沿って捻じ曲げてしまうようなある種の禍々しさを(無理やり捻じ曲げることで)きれいに取り除き、バリアフリーの施された(あらかじめ保証された公正さの支配する)音の交通路へと聴き手を導く。それにくらべると名盤と謳われた『Sunflower』のなんと危なっかしいことか……たしかにDennisの歌で幕を開け、悔しいほどに至福の短さの"This whole world"から"Add some music"へと至る展開には一分の隙もなく、その勢いでデニス再登場を受け流しつつ"Deidre"が飛び込んできたらもう短く呻いて絶頂に達するほかないわけだけどそこからたしかにいい曲だし格好いいのだけど決定的なところでハズしていて結果聴くに堪えない"It's about time"でいったんずっこける。そして甘く苦い"Tears in the morning"で胸焼けを起こし美しい"All I wanna do"の感傷に吐きそうになる。そこに"Forever"が現れて強引に盛り上げて聴き手もろとも燃え尽きる……以下三曲はただぼんやりと、ときに感傷に流され、ときに立ち止まって注意深く耳をそばだて、ときに微笑を浮かべつつ緩やかなイメージの流れに身を任せるともなく任せ気がついたときには水底にへばりついて窒息死寸前、2in1版CDならばそのままなし崩しでさらに聴くに堪えない音の奔流に投げ込まれることになるだろう。「聴くに堪えない」というのは字余りのように焼き付けられた情動の残像のようなもので、文字通り「聴くに堪えない」ということをしか意味しない。出来のよしあしや好き嫌いとはまた別の話。


  とりあえず『最果てのイマ』サイトリニューアル予告記念。たぶん出るでしょう。お約束として関連書籍


  ビデオの底に溜まっていた『フタコイ オルタナティブ』が面白かったので感想を書こうと思ったのだけどもう二時じゃないか……(いっしょに底に溜まっていたのは電波ロボットものとかフランケンシュタインの正統的ヴァリエーションとかよゐこ有野とか。よゐこは最近出たDVD『蔵出し』でのコントの出来がひどかったので血糊で口をゆすいだ。とりあえず鈴木おさむ氏のせいにしておく)。