Five songs(tunes) I listen to a lot, or that mean a lot to me

  • The Heavy Blinkers "Baby Smile"

 瞬間の僥倖、過不足なく、すでにそこにあったもの、聴いた瞬間にすべてがわかり、充ち、そっとこの曲のために用意していたその場所を空けた。それ以来ずっとそこで鳴りつづけている。ひとたびその場所に来ればただちにそのことがわかる。ヘヴィ・ブリンカーズがあまり日本で受けいれられていない様子なのが悲しい(違う?)。あとこの曲でヴォーカルを務めるRuth Minnikinがソロアルバムを出したらしいのでこれはぜひ聴きたいと思う。

 おさなごころの君ことかの麗しきCaroline Novac(の声)は大野由美子(の声を加工したもの)だったのだ……という信憑性の高い仮説が流布していたことを仕事の最中に不意撃ちで知らされてしまってまたたく間に興奮し、動揺し、混乱し、仕事どころではなくなってしまって困った。例のごとく自分だけが知り損ねていた公然の秘密ということなのだろうか、ずるい、さっそく帰宅して何年かぶりにBuffalo Daughterのアルバムを引っ張り出してみるがよく考えたらいま手許にあるのはよりにもよって面白くもなんともない(と当時は思った)『New Rock』だけで(やはりつまらなかった)、しかもまともに声が聞ける箇所がほとんどなく、それでもとりあえず飛ばし飛ばし聴いていてそれらしきものを拾い上げてみるとなるほど言われてみればちょっと……いいね……しかしこれではいかにも材料が少ない、戦果があってないようなものではないか、こうなってはMoney Mark御大の鼻カラオケでひたすら癒されるほか救いの道はないではないか!

 マニアではないのでグールドによるこの曲の音源が何種類発売されているのかは知らないけどとりあえずこの曲ならば何でもいいというわけではなくてCBS/SONYから出ていた町の床屋のジェームズ・ディーンみたいな風体のグールドさんがジャケに写っている盤に限る(理由はない)。まさにこれこそ元祖鼻カラオケ。音量を上げるとうんうん唸るグールドさんの声が聞こえてきてとても嬉しかったのをおぼえている。はじめて聴いたのは学校で知り合った生臭住職の寺のなかで、そのときは友人と雪のなかお邪魔してギョウザを焼きながらウィトゲンシュタインとカントの話題でコーヒー豆を挽きつつ爺さんがドイツのエアチェックで拾ってきた現代音楽や若者たちからお布施された赤武士とかKing Crimson(もちろん『太陽の戦慄』だ!……『ポセイドンのめざめ』だったかな?)を聴き、お布施として持参した『狂わせたいの』と『ムトゥ 踊るマハラジャ』のビデオをそれぞれ二回観た(坊主大喜び。特にムトゥ)。

  • Yoko Kanno "Cloe"

 巨大な、朽ちた歴史建造物、そのプリズムの断面、ある時刻、ある季節のひとときに空間の綻びが現れそこから時間が塊のまま流れだす。誰の同意も得られないだろうが"Surf's Up"と対のように感じている。この曲でヴォーカルを務める山本千夏さんという方の行方は本気で気になるのですが……坂本真綾『Lucy』とか『tokyo.sora』とかハウスシチューとか……あと何かあっただろうか。

 身体に染み付いている。すべてはここからはじまった、といっても過言ではない。つねに生活のリズムの内に潜み、何度でも立ち返りつつ現前する。ここで鳴るすべての音を肯定する。