今回はある程度の羅列に成功


  一日ごとに振り返っているとほかに何もできないし一月ごとでもやや面倒くさい、半年ごとだと区切りが弱くいつ着手し手放せばいいのかわからなくなるのでどうしてもその作業は年末にまとめてとりかかねばなるまいしそうすべく自らに課している。そういうわけでそろそろ今年を振り返る準備をはじめておきたい。覚え書きのための覚え書き、色落ちのした青写真をただ入念に研きなぞるための道具集めであり筆慣らしだ。今年こそ自分のためだけに映画ベスト10とかベストライヴ10選みたいなものを掲示して捨て置ければいい。すでに憧れで胸がいっぱいというわけだ。


  慎みも信念もこだわりも粘り強さも努力も欠いたまま発売日もレーベルもアーティスト名もタイトルもジャケットさえも見ることなくただプラスチックや紙や偽ウールや文字列の手触りだけで次々とCDを買い物カゴに放り込み自宅へと運び入れる。そんなことをやっているからせっかく二枚組みで再発したGlobal Communicationの94年版CDをわざわざ1000円高い価格で買って青ざめる結果になったりするのだがしかし9月をすぎるといつのまにかリリースされていたりリリース予定だったりする新譜の数々をいかに自分が見過ごしまた見過ごすところだったかをあらためて知りしかしことさら情報集めをすることもないまま少しずつ軌道を修正していく。今年のベストCDに何を選ぶか。円陣を組み声と楽器を重ね合わせ組みほぐしこする男たちといった態のANIMAL COLLECTIVEの新譜は当然ながら筆頭候補大本命だしまだほとんど聴けていないがJohn Zornコンダクトによるライヴぶち抜き三枚組みでもまだ足りないと思わせるBAR KOKHBA SEXTETもまた外すわけにはいかない、SOULEAVEは一時期アホほど聴いた今年のベスト茶太であったしそれならベスト盤だということで霜月はるかeufoniusをこぼしてしまうのは気が引けるしriyaならば麻枝准の手による『Love Songs』だって出色の彩りであったのはいまだ記憶に新しい。絶望的なまでにとことん暗く苦く浮世離れしながら埃と泥のにおいが立ち込め気がついたら靄の彼方の極楽浄土から遠雷のごとくDRUM'N'BASSのリズムが響いてくるMATT ELLIOTT 『DRINKING SONGS』とか、もちろんMccartneyだって素晴らしい仕事を残したし、森千恵子による箏と十七弦の独奏『JUMPING RABBIT』も『シタール幻想』とともに夜の殿堂入りは間違いない、本当に弦楽器って面白いなあと思った。まだまだあろうが数え上げるのももどかしい。ZUINOSINにせんねんもんだい藤井郷子カルテットの新しいやつもまだ聴いてないよーんと叫びたいし(あふりらんぽは聴いた。うねる瘴気と破れかぶれな音の感触が狭く空気の濁ったライヴハウスのにおいを現前させとにかく懐かしさに浸されてしまいニヤニヤ笑いが止まらなかった)これから豊田道倫の新作も出るのだからまだまだ気を緩めることはできないのだった(ちなみに豊田『SING A SONG』は発売されてからわりとすぐ買ったのだがなんといままで一度も聴いていないことに気がついた。なんと一年間寝かせてしまったということになる!二枚組みの弾き語りアルバムで計二時間強、一度聴きはじめたら二枚通して聴かないと収まらないことはまちがいないということで異様に気合が入りおいそれと再生ボタンを押すことができない……というほど難しい事情があるわけではなくてなんとなく聴きそびれてしまったという感じだ。ライヴではじめて聴いて静かに感動した「宇多村美香」も入っているので、というかそれがまず聴きたいがために買ったものだけど、それだけを抜き出して聴くのは決して許されない。いや待て、実際は一度くらいは聴いたんだっけ、でもおぼえてないなら聴いていないのと同じだよしいまからただちにすぐ聴こう、と思ったらCDが見つからない……ほかにもそういうやつあるんじゃないか?やはりまだまだ気を緩めてはいけないということだ)。