『ローズ・イン・タイドランド』その1

 例のごとく上映期間が短く、また来週は金沢行きで、しかしどうしても劇場で観る必要性を感じていたので初日の第一回目に『ローズ・イン・タイドランド』へ。映画を劇場で観なくてはならない理由などあるのか。スクリーンは不在のときでさえもその残酷さばかりを強調してくるではないか。テレビで『いま、会いにゆきます』(すぐ?また?)を見かけた……どうやらそういうことだったらしいのだ。どういうことかというと現在使用しているHDD/DVDレコーダーは定期的に電波で番組表を取得して蓄積された情報をその都度上書きしていくためチャンネルを切り替えると目下OA中の番組名が画面上部に数秒間表示されるのだけど、その日珍しく22時過ぎ頃にテレビのチャンネルをHDDレコーダー上で無心に切り替えていたら画面にその映画の名前が表示されて、ふむ、とちょっと興味をおぼえたのでリモコンを目の前の本とCDの山のあいだに置き、どうやらCM中のようなので待つでもなく画面をぼんやりと眺めていたのだけどなかなか映画が再開してくれなくて、おかしいな、と思っていると中村獅童が出てきて、もちろん映画に中村氏が出ているのは知っていたので、ああ、映画とシンクロさせてるのかあ、わざとらしいなあ、でもこれってどうなのよ、効果はあるの?とかごちゃごちゃ思っていると竹内結子まで出てきて、もちろん(中略)のでさすがにこれはおかしいと思って散乱した意識を取りまとめようとしていると医務室のような物の配置の空間で医者とおぼしき白衣の人物が中村氏の打ち明け話に対して「信じられない、でもきみが嘘をつくとは思えないし……」みたいなことをいささか呆気にとられた表情でつぶやいていて、なんか『黄泉がえり』みたいだ……と思ったところで、あ、これは物語だ、このCMみたいな映像は余すところなく映画そのものだったのだ、ということに気づき、映画というもののそのやり口の容赦のなさ、残酷なまでの平等さに慄然とした……というより単にあらためてその物質性にげんなりとしてしまった、とつまりはどうやらそういうことだったらしいのだった。