括約筋の申し子たちに揉まれつつ日々通う苦悶塾の帰りに寄ることができるのは距離と開店時間の兼ね合いからせいぜい難波のとらのあなタワーレコードくらい。で、その日はタワレコへ。例のスローガンには賛同しかねるがなんば店は適度な人口密度で試聴機も多くレイアウトも頻繁に変わるので居心地がよくついついフロア間を上下しながら長居をしてしまうのだが(bounceもフリーペーパーのわりに充実しているのでこれ一冊あれば音楽雑誌など読む必要がないほどだ(とは思わないがもともと雑誌など読まないので結果的に唯一読む音楽誌になってしまった。たまにそれとは別にインタビューばかりの月報のようなものを会計時にディスクといっしょに袋に入れてもらえるときがあって、滅多にもらえないのでどういうタイミングで発行されているのかはよくわからないのだけど、最後に読んだときに印象に残ったのはサンボマスターのインタビューで、見開き2ページで記事は1ページにたった3分の2くらいの分量でしかないんだけどその中にものすごい密度でほとんど内実のないもはや反響定位でかろうじてつかむしかないような「永遠」とか「僕」とか「君」とか「世界」とか「絶望」とかそういったお里の知れるような言葉が詰め込まれていて、それでいて肝心の音楽については「ロックンロール」というこれまたよくわからない言葉で押し切ろうとしていて、まあ、なんか、大変だなあ……とは思いました。興味なくてごめん。あ、ひょっとしてこういうのが「ゲーム/アニメ的想像力」が圧倒的な現前を誇る光景、とかいうやつなんだろうか。先生教えて)。中原昌也が連載していたのがいまとなっては夢のよう)その日は待ち合わせも兼ねていたので洋楽フロアを覗いてから(やたらシューゲイザーものを推しているのだが、どれも同じように聞こえるので試聴機に連ねてもあまり意味がないような気がする。早くも今年のベスト10入り確実との呼び声も(おそらく幻聴だろうが)高いOur Brother the Nativeみたいなのもしっかりフォローしているのは偉いと思った。試聴もできたようだし。値段は高めでしたが)J-POPコーナーへと降り、うろうろと怪しい動きで物色していたら背後に待ち合わせ相手が立っていたので目的のもの1枚とその場で見つけたもの2枚をつかんでレジへと向かいそのまま並ぶことなくめがね店員氏に商品を手渡しつつレジのところに掲げられた「6000円以上ポイント2倍」という掲示に視線が引きつけられ、あれ……とぼんやりCD三枚の価格を思い出していると「6,040円です」と合計金額が告げられ、お札と小銭とポイントカードを出すと「6000円以上なので2倍つけときますね」と言ってくれてちょっと得した気分になった。以下三枚。

  • 『OSAKA ROMANCE OUT』V.A. \1,000

松本亀吉氏選曲の大阪アンダーグラウンド音楽集というのかどうかわからないがASUKA TEMPLEの人力器楽の擦れあう福音のごとき長大なライヴ音源が収録されているわけでつまりは弓場さんが載っていたら格好いいこんな雑誌ならぬ弓場さんが収録されているこんなアルバムなのだから格好いいに決まっている。Country Paradeを所収してくれたことに感謝。ちゃっかり自分のバンドの音源が入っているのはご愛敬だがべつだん身贔屓を感じる出来ではないので問題なし。

もりばやしみほ朝日美穂川本真琴ですって。たいして話題になってなさそうな異種混合ぶり。DVDまだ観てませんが。朝日美穂は地平線すれすれで活動しつつづけてながら10年ほど一貫して質が高いと思うがいかがか。

  • 『ARROW HELLO WONDERFUL WORLD』the ARROWS \2,940

メジャーデビューだそうだけどそれに相応しい躍進の一枚だと思う。質が飛躍的に向上したというわけではなく収録曲もリメイクや再録がほとんどなのだけど耳騒がしくない程度のアレンジの豪華さと音の雑多さが初手のアピールとして過不足なく利いている。ロックンロールは明るくなくっちゃ?そのとおり。そして宣言通りのものを提示してくれる素直さがある。歌詞は単純で、語彙や修辞は奇妙にベタで古臭く、しかしその畳合わせ、切り方によって身体に跳ね返り、まさにロックとロールを促す腰砕けの言語感覚に偏在する残尿感を見る。しかしなんかみんなロックンロール、ロックンロールうるさくないか。髭にもそういう曲があった気がするけど。どうしちゃったの?

 そういうわけでもう一回くらいキャンペーン中に(今度は意識的に)きれいな買い物をしてみようかと思います。まんまと乗せられちゃっているわけですが。