だんごっ、だんごっ

 久しぶりに『30minute night flight』を聴いていたのだけど、はじまりはいかにも坂本真綾という感じではじまりながらもアルバムが終わる30分間の短い間にそのことを忘れさせる、ふとチューニングが甘くなり情報と鳴っている音の同定がかなわぬままぼんやりとそれが坂本真綾だったという事実に追いつくような瞬間が何度かあった。とてもよい。で、そろそろ新譜が出ていたりするんじゃないかと思って公式ページをのぞいてみたら案の定来月にシングルの発売が控えていて、しかも鈴木祥子作曲と斉藤ネコ編曲という興味深い組み合わせ。芝居で忙しいということもあろうがほどよいペースで活動していてくれてありがたい。ところでアルトマンの『ショートカッツ』がようやくDVD化するそうですが、いったいぜんたい『ナッシュビル』はいつになったらお目見えするのでしょうかね? アメリカ版は出ているらしいので日本における商業的判断の結果ということなのだろうか。代表作という認識だったんだけど……(まさか『M★A★S★H』とか言わないでほしい)。いい加減踏ん切りをつけて、フレデリック・ワイズマンのBOXセットや『恐怖奇形人間』、『絞殺魔』などとともに輸入しちゃえばそれで済む話ではあるんですが、我が家の無限小の居候であるところの脳細胞二個マンは脳細胞二個ゆえに日本語字幕がないとさすがに寝てしまうだろうし最悪たった二個しかない脳細胞までもがたちまち擦り切れてしまうおそれもあるためやはり国内版を待つしか術はないのだった。

 あしたの弱音 (BEAM COMIX)最近は枕の友……というほどのものではないが、なんとなく枕元には橋本治の『革命的半ズボン主義宣言』が置いてあってパラパラ読んでしまう。何か寝転がりながら断続的にパラパラめくりつづけてもう10年くらい経過していたりするのでおどろいてしまうのだけど。で、トイレには『パサージュ論』と『あしたの弱音』。タイム涼介を読むと無駄に力が入り、やがていちどきに抜けるのでとても向いている。一きばりにつき一挿話。たいていは上体を反らしながら歓喜に打ち震えるか、前屈みで呻きながら頭を抱えている。狭いユニットバスで小さめの便座に跨っているとパトスの状態に応じて身体のバネを伸縮させるこの二種類の動作しかできないのだ。そして水を流し立ち上がりながら本を置き個室をあとにするころにはトイレこそが人生だという大いなる勘違いに侵されている。