バイオショックだよ!

 つい先日その名前を耳にし、「bioshockってなに?biohazardの親戚?」などと平気で口にするいわばXBOX360(サンロクマル)情報弱者っぷりを隠しもせぬまま二ヶ月ぶりくらいにXBOX LIVEに接続し、大胆なシステムアップデートに戸惑いながら新作デモの項目を見ていたら『BIOSHOCK』の英語体験版がきていたのでヘッドホンを装着して予備知識皆無のままはじめてノンストップで一時間半くらいデモ終了まで駆け抜け、ほう……、と息をついていると畳みかけるように怪物化した元人間たちを特殊能力と武器と地形を駆使して火だるまにしたり凍り付けにして粉々に砕いたり罠を張って電気で全身を貫くデモ映像が雨あられと降り注いできて終わったころにはぐったりしてしまった。寝る前に『キラ☆キラ』を少し読み進めておきたかったけどまったくもうほんのわずかも起動する気さえ起きず、ぼんやりとした頭で11月のライヴで終了後に御本人の手より買い求めた滝本晃司『空の下』を聴いていたらまあこれが沁みる沁みる……(思わず今日も二回リピートしてしまった)。

 ともかくスパイクから来年二月に発売予定の日本語ローカライズ版は間違いなく買うでしょう。のっけから飛行機が炎上して墜落し、あまりのことに混乱しながら精緻な水のテクスチャーをがむしゃらに掻き分けているとあれよあれよと巨大な水中都市Raptureに誘い込まれ、がなり立てるラジオの音声に導かれるままわけもわからず薄気味悪い廃墟を徘徊する。狂騒とともに躍りでてくる人間みたいなものたち、静けさのなかとつぜん頭いっぱいに噴き出してくる女性の歌声をはじめとした様々な雑音、悪趣味なコミック、ひたすら侵入者を殺戮しつづけるセキュリティ・システム、様々なところに断片として残されたひとつの都市の壊滅の記録、謎の少女を守る異形のメカ……その館内の薄暗さと窓からのぞく水中の美しさが形作る空間にどうしようもなく病みつきにさせられてしまう。この騒々しさと静謐さのギャップはただごとではない。視覚と聴覚、そしてそれらによってもたらされる言葉の足並みのずれたザッピング。胸騒ぎ。そして何より即物的に怖いし、痛い。序盤で右手から電撃や炎を放出できるようになるのだけど、そのためのエネルギーを補給するときに右腕に刺す極太の注射がもういちいち痛そうなのだ。たまらん。待つのはまったく苦ではないのでこのままデモは封印して初回プレイ時の感覚を残し、それをのんびりと希釈しながらローカライズ版の発売の日を迎えることとします。大丈夫だとは思うけど、くれぐれも意味不明の規制はやめてね(ゾンビの首を鎌で刈れない『デッドライジング』なんて……)。