五穀米カレー、食べたし

 『レディ・イン・ザ・ウォーター』を観終えて、すなわちラストを通過し、終盤のいかにも即席で場当たり的で不格好な儀式、「告白」する管理人の後ろでつながれた手のぞんざいさに、全体が捉えられるのではなくその連結の断片だけが背後にそっと映り込むその見え方に、その告白、確かに信仰を描いてはいるが宗教とは無縁な幾重もの雑多な眼差しの交差に、その強度を欠いた揺るがなさの総体に対する突発的に煮崩れてきたような感動を反芻しつつぼんやりと松岡錠司監督の映画『トイレの花子さん』の夜の学校に忍び込んだ変質者の周りに花子さんからのテレパシーによる呼びかけで集まってきた全校生徒たちがバラバラとにじりよってきて無言で取り囲み校庭の真ん中へと追い詰めていく圧巻のクライマックスを思い出したりもしていた。なかなか悪くないんじゃないか……。

 HDDプレイヤーに数百分に及ぶ未見のストックを残しながら今期のアニメも選定しつつ何本かをHDDにため込んでいき時間があるときに観ているのだけどなぜかいつも『ネギま!?』や『Pumpkin Scissors』や『Black Lagoon』を差し置いて『はぴねす!』を真っ先に観てしまい、しかもいちばん楽しんでしまっているような気がしてふと冷静に立ち戻ってみたが時すでに遅しと判断しても差し支えはない状態に陥っていた。ただのゲーム原作のアニメ化で、原作のヒロインである神坂春姫の視点で描いていることがほどよい異化効果を生み功を奏していると言えなくもないものの実際はそれほどの効果を得られることもなく、語られ方や道具立てともども平板で型どおりの域を出ず作画や動きも決して上等とは言えないのだけど……なぜか見終わったものもHDDから消すことができないのだった(むしろ細部にネタを仕込み凝った画面作りや演出を施している『ネギま!?』のほうがかえって平板さを際立たせているような感じがした。第三話の戦闘とか第二話のエヴァンジェリンに襲われたあととか第一話のネギ・スプリングフィールドが登校する場面とか。とはいえ第二話の終盤は目を引きつけられたし、全体としては面白くて見所が多いことに変わりはなく、学生たちのおしゃべりと出席番号+名前+顔写真+所属クラブの情報で構成された出席簿の見開きの静止画を重ね合わせその都度発言者の写真をズームアップしていくやり方は毎回2〜3分やって欲しいと思える超絶的に安易かつ画期的な発明だしクラス全員に喋らせることに意義があるといわんばかりの騒々しい教室風景も楽しい。委員長の輪郭線が妙に太いというかたまに落書きみたいな顔になるのは気のせいだろうか……あとは図書館島のエピソードが何らかの形で挿入されることを望むばかり。どうなの?)。