ポイント制が微妙に煩雑かつ主に偶発的・散発的な客にのみ利するように変更されたので自然に足が遠のきつつあるのだけどともかく平日の昼間に降りてくるささいな啓示に衝き動かされ即日受け皿となってくれそうな大きな店舗は手近なところでは他にないのでとりあえずその日なんばのタワーレコードでたま『ナゴムコレクション』と計画外ではあったがmopsy flopsy『draw a circle』を買った(店内をざっと見ていたのだけどくるり岸田繁という人はちょっと絶賛しすぎ。まあ偽りの賛辞じゃないのはわかるんだけど、最近では文庫本の解説者が高橋源一郎だったときと同じようなしょっぱさを感じます。岸田氏からは実害を蒙っていないのでいいんですけど。『グランドフィナーレ』や『コカイン・ナイト』や『インストール』の解説、あれはないでしょ……)。ともあれたまだ。たま。まともに音源を聴くのは十数年ぶりなのだけどつねに隅っこで低音で鳴りつづけごく稀に前面化したものだし、思い出したようにぽつぽつとカラオケで「らんちう」や「学校にまにあわない」や「海にうつる月」を歌って一部の人々を湧かせたり沈黙させたりしたものだった。それでも『ちびまる子ちゃん』での久々のフィーチャーやダウンタウンによる「たまのランニング」、山田花子、映画『害虫』、解散の報、「クレーターのほとりで」などなど様々な契機を横目で見ながらも何の行動に結びつくこともなく首筋の汗を絞り抜きつつ倉庫の湿り気や土材の陰日向や電磁装置の朽ち果てに紛れてこっそりとしかし高らかに「牛小屋で寝た……」と口ずさむだけに留まっていたのだけどなぜか先週いきなり波が押し寄せてきてあっというまに包囲されあわや溺れかけという次第。ひょっとしたら『911FANTASIA』を聴いてはるか遠く「さよなら人類」とディスカバリー号に何とはなしに思いを馳せたことがきっかけだろうか?わからない……が、いちど開放してしまったらもう後戻りができないのは確かだ。かつての(深夜ラジオで薄気味悪い音楽として発見したビートルズに受け継がれるまでの)短い期間ながらも深く浅はかでひたすら騒々しかったあの盲目的熱狂とはまた別種の熱が身体に戻ってきたことを感じる。むろん懐かしいものではあるが、その懐かしさはアンサンブルに触れたときの感覚、摩擦によって生じる聴き手の感情に対して半ば昂揚を伴って抱くもので、音楽そのものはいまなお新鮮だしリピートするたびに発見もある。本当にみんな声が良い。それぞれなんか別様にセクシーだし(知久寿焼マンドリンやギターを掻き抱き定まらない視線で頭を巡らしながら歌う姿は性的な意味すれすれでドキドキする)。音楽的教養もある(過去の音楽を下手に対象化することなく知性と体感をもって各々消化している)。楽器についてもテクニシャンではないんだろうが、しかしうまいとしかいいようがない。そしてなにより滝本晃司の歌が身悶えするばかりに沁みて沁みてしょうがない(好みなんて十数年では変わりようもない……というかこのとき根本的なものが形成されたのだと思ってもいい。あの危うげながら芯のぶれない歌声とわずかに傾いだ語彙センス、そして琴線を冷たく撫でるメロディ)。その他いろいろ……正直いまの状態だとだらだらと締まらないファントークでいつまでも空白を埋め続けられるような気だってしてくる。柳原幼一郎の「ヘビー級のチャンピオン」という言葉の響かせ方がさぁ……とか、インディーズ時代の「学校にまにあわない」ってシャウト部分でいきなり録音している部屋の狭さが体感的に迫ってくるのがいいよね……とか、まあこれだけ書いてあまりのみっともなさにうんざりしてきたんでやめますけど。

 大阪で11月に滝本氏のライヴがあるそうだ。しかも日曜日。せっかくの好機なので行ってみようと思う。「『夏です』と1回言った」とかやってくれるでしょうか……。