歌姫は売り子を兼ねた

 島崎藤村がその場にいたらそう呟いたであろうが、ともかく昨日一般参加者としてM3大阪に足を運び、熱気やら痺気やら権謀術策やら深謀遠慮やら血やら汗やら因果のセル片やら天涯のだるま質やらがぶつかり合い立ちこめまみれ錯綜するグランキューブ大阪の決して広くはないすし詰めの会場内を掻き分けとりあえずの本命であるencounter+とclock musicを含め二時間ほどの滞留で14枚確保、SJV-SCとかKuu§kaiとかmaple leaf霜月はるか氏がひたすら眩しかった。着ていた服の色を含めて……)とか事前検討していたところをうろうろしていただけでやたら消耗してしまってあまり現場での無茶な買い物ができなくて、milktubの面々や魔ゼルな規犬の文字を遠目に望みつつ、未知の収穫はCAOLILAの"Abstracts Music for CD player"くらいかなあここの作品は他のも買いだよなあ、とかなんとか会場を後にしてから脳細胞二個マンと合流し会場近くにある靱公園のまわりをウロウロしながら考えていて、ふと気になってカバンの中の戦利品をあらためてみたらどうしても買ったはずの1枚が見当たらない……しかもそれがencounter+の会場限定販売ディスクだったりして、今後手に入る見込みはきわめて薄く、買ったときに受け取り損ねたか収納する際に取りこぼしたか財布を取り出す際に吹きこぼれたか、はたまた限定CDを買い損ねたものすごい手腕のスリにそれだけ抜き取られたか、正直どれも考えにくいが何にせよいまさら確かめる術などなく、小川や花壇や石を置き巡らせた靱公園の広場の交流の中心近くに腰かけ、なんでなんだ、なんでなんだ、と未練たらしく何度も狭いカバンの底を攫いながら眼前に広がる騒がしいことこのうえない『もずく、ウォーキング!』の世界、犬たちの頑是ない獣の交流を眺めるともなしに眺めていた(ぴょんぴょんと猛スピードで広場中を駆けめぐりながら他の犬たちにいちいち挨拶してまわるスパイダーマン柄に身を包んだモコモコの真っ白い鉄砲犬をずっと目で追っていたり)。